大阪にて70年以上、魔法瓶の製造販売を行なうピーコック魔法瓶工業様の「東京インターナショナルギフトショー 春2023」ブースのデザインを担当させていただきました。
ピーコック魔法瓶工業さまは魔法瓶、水筒をはじめ調理家電、酒器など多くの商品を開発し販売されています。今回のギフトショーが初めての出展ということもあり、できる限り多くの商品を見ていただきたいといったご要望でした。こういったご要望は弊社でもよくあることで、多くの展示会でもたくさんの商品を並べている会社さまを見ることがあると思います。そこで気をつけないといけないことは、
・商品が多すぎて何を見たらいいのかわからない
・どんな会社なのかわからない
・他社との違いがわからない etc…
ということ。
商品を何でもかんでも並べるのではなく、伝わりやすさを考慮し見せる商品を整理すること。その商品の特徴がなるべくシンプルにスマートに伝わるようにすること。これらを注意し、なるべくブースに入っていただく機会を増やすことがまず大切です。そこからより詳細に商品や会社のことを知っていただくためにお客様にとっての分かりやすさと、ブースに立つ側の営業のしやすさを考慮が必要になります。
今回ピーコックさまとご一緒させていただきブースのデザインをする中で考えたことを以下に順でまとめさせていただきました。
01.商品数を絞る
商品が多いことは魅力の一つですが多すぎると逆効果の場合もあります。ギフトショーのように沢山のブースの中でお客様も時間の限られた中目的のものを探さなければならない。そんな状況で商品数がただただ多いと「何を見ていいのかわからない」「見る気になれない」となりそもそもブースに入ってもらえないということになってしまう可能性が高いです。そのためピーコックさまには多くの商品の中でも「他社にはない機能や特徴があるもの」でなるべく絞っていただくようお願いしました。絞っていただいた商品の特徴をお聞きし、ピーコックさまと一緒にそこからさらに絞り込みをはかりました。
絞ったと言っても持っていかないわけではありません。展示台の中にその他の商品はストックしておき、お客様が気になった場合はそこからお出しして営業できるスタンスです。大事なことはブースにいかに入ってもらえるか、注目してもらえるか、会社や商品の特徴を“簡潔”に理解してもらえるかです。
02.使用シーンで分ける
商品数を絞り込んだとは言え多くの商品数を抱えていらっしゃるピーコックさまなので商品数はやはり多いです。そもそものご要望も「多くの商品を見ていただきたい」ということなので商品は約30種類、そこにカラバリ数点ずつ。これらをなるべく分かりやすく伝えるために数案ご提案させていただきました。その一つが商品の使用シーンに分けて展示する案です。今回持っていく商品を「ダイニング」「アウトドア」「ボトル」「ゲーミング」の4つのジャンルに分け、さらにそれをカラーで分けることでお客様にとってより分かりやすく、さらに多くのブースの中でもブース自体が目立つことで注目してもらえる確率を上げたデザインです。他に考慮した点として営業のしやすさ。カテゴリーに分けることで説明が簡単になりより簡潔にそれぞれの商品の魅力を伝えることができます。もう一点考慮した点はバイヤーの注目のされ方。いきなり商品一点一点に注目させるのではなく、はじめに使用シーン、ジャンルで注目していただくことで興味の間口を広げ、ジャンルごとにたくさんの商品を見てもらえるように仕掛けました。
03.商品ごとにタペストリーを連続で並べてアイキャッチを
ギフトショーでは多くのブースがひしめく中をお客様は短時間で回ります。その中で注目していただくための“アイキャッチ”はとても重要です。ブース全体のカラーを4つに分け鮮やかにすることで注目していただくのもアイキャッチの一つでこちらで意識したのは遠くから見た時のもの。もう一つ遠くからのアイキャッチを意識して今回取り組んだことが、幅9メートルの壁面に商品ごとに用意したタペストリーを連続して並べたこと。タペストリーがずらっと並ぶことでピーコックさまの商品数の豊富さが一目で伝わります。タペストリーのレイアウトや内容も工夫しています。自分より前に立つ人でかぶってしまわないように一番伝えたい情報は上部に持っていき遠くからでもある程度の情報が伝わるようにレイアウトしています。ここでは商品のキービジュアルとキャッチコピーを上部にレイアウトしました。タペストリー自体の内容はなるべく簡潔なものに。細かなスペックはあえて書かず、このタペストリーで興味を持っていただいた方には後ほど説明させていただく中央のメイン什器へ誘導する役割を兼ねた内容にしました。あくまで商品を簡潔に分かりやすく伝えるもの。
もう一点このタペストリーで考えたことがギフトショー以外でも使っていただけるということです。ギフトショーは出展料、施工費、カタログ印刷費、デザイン費、移動費、宿泊費、などかなりの値段がかかってしまいます。しかし会期はたったの3日間。これだけのために使えるものではなく、他の展示会や催事などでも使用していただけるように考慮しデザインさせていただきました。
04.店頭ディスプレイ、使用イメージでアイキャッチを
02,03は遠くで見た時のアイキャッチですが近くで見た時のアイキャッチも考慮しました。ジャンルごとに分けた中央什器の通路側にその商品が使用されるシーンをイメージしたスタイリングをすることで注目していただけるようにしました。ピーコックさまの商品がどのように暮らしに寄り添うのか、ピーコックさまの商品を使うことで暮らしがどうアップデートされるのか、実際にスタイリングすることでお客様が想像しやすく、伝わりやすくなります。またバイヤーの方々もこうディスプレイしたら商品の魅力を伝えることができる参考になるため、お取引の材料になります。
05.商品詳細ディスプレイでより詳細な情報を伝える
各ジャンルで分けたブースの中央に什器を準備し、ここではあえてシンプルに余計な装飾はせず商品を並べ、什器壁面には商品の細かな情報をレイアウトしました。9メートル壁面のタペストリーや通路側の使用イメージで簡易な説明を受けたお客様がさらに詳しく知りたい際にこちらに誘導します。全てのお客様に100%の情報を伝えることは多くの来場者やブースがある展示会ではするべきではありません。興味のないお客様に何十分もかけて話をしてもお互いにとってよくないので、回転率を上げるために「使用イメージディスプレイ→壁面タペストリー→商品詳細什器」のようにステージを分けることで無駄のない営業パターンを考慮させていただきました。
また什器壁面の詳細情報も「使用イメージ→キャッチコピー→詳細情報」といったレイアウトの順番を考慮し説明がなくてもある程度の情報を得られるデザインと内容で作成しました。
06.会社の歴史から紐解きアイデンティティを伝え、商品へつなげる
最後に一番大切な部分。会社を知っていただくということ。ピーコックさまのように魔法瓶や水筒をメインに取り扱う会社は日本にも沢山あります。その中でもピーコックさまは1950年に創業された70年を超える歴史ある会社です。多くの商品が実はピーコックさまによる開発がきっかけで今の魔法瓶や水筒があることはなかなか伝わりにくいところですが、実際に当時の商品を展示し、歴史と会社のアイデンティティをしっかり伝えることで、そこに共感と信頼を得ていただくことは、世の中に似た商品がひしめく中お客様を勝ち取るためにはとても大切なことです。これがあることで各商品の説明がより説得力のあるものに変わります。
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もっと細かな点で目に見えない部分など考慮した箇所は数多いですが、大まかな点として以上になります。
ギフトショーが終わりピーコックさまから反応をお聞きし、今までにないジャンルのお客様とのつながりも多かった、取引などはこれから、とのことで満足いただけました。これから営業先のフォローや、ここで得られたお客さまの声などを参考にした商品開発など、展示会ブースプランだけで終わらず、伴走していけたらと思います。