SESSION 屏東 2023-24

SESSION 屏東 2023-24


台湾最南端に位置する屏東(ピントン)県は、豊かな自然に囲まれ、カカオや果物といった農産物の生産が盛んなことで知られています。また、ルカイ族、パイワン族といった原住民の居住地域があり、独特の文化が根付く地方です。台北のような大都市が“表側の台湾”だとすると、そこから奥へ進むことで見えてくる“裏の台湾”の魅力に満ちた、いわば「奥台湾」とも呼べるエリアが屏東です。
セメントプロデュースデザインは、屏東県政府の原住民伝統工芸ブランドサポート事業に2023年度から参画し、商品開発講座「Session屏東」にてセメント独自の商品開発プロセスを用いて地域のもつ多様な歴史的・文化的背景を生かした商品開発に伴走してきました。その中から、この度2社の新商品が完成しました。

 

 

「生活に根ざした工芸から生まれる新プロダクト」


1つめは、月桃編みの伝統工芸ブランド「桃布里」(Tau bu li)。設立10年の集大成として新しい編み技法を研究し、より幅広いシーンで使えるバッグシリーズを完成させました。2つめは、原住民の伝統的な革彫刻を発展させ、民族独自の手紋(刺青)模様がもつ意味合いを抽出してデザインした「AliAli頑皮雕」のサコッシュです。

 

 

[桃布里 / 人生に寄り添ってきた「月桃」の美しさを編む ]

2013年設立された「桃布里」は、屏東に根づいてきた工芸である月桃編みのブランドです。
月桃編みは日本の奄美や沖縄にもある工芸で、台湾では主に南部の屏東や台東エリアで原住民により営まれてきました。その歴史は文献にも記録されていない大昔までさかのぼるといわれ、原住民は土地にある自然繊維を暮らしのあらゆる用品や食べ物に使いこなしてきました。月桃は、原住民の一生に欠かせない重要な存在とみなされています。「桃布里」は我々セメントプロデュースデザインによる商品開発サポートを経て、独自の新しい編み方を研究開発し、素材の美しさを表現する「編みバッグ」シリーズを生み出しました。
天然素材の美しさと丈夫さ、幅広いファッションに合う洗練された佇まいが特徴で、編み方は伝統的な「クロス編み(シンプルな十字の編み)」と、新たに独自で開発した「チェック編み(格子柄のような編み)」と「モザイク編み(複雑に網目が絡み合った線密な編み)」の三種類。サイズはちょっとしたお出かけにいいSサイズ、A4サイズが収まるL縦型とL横型、荷物がたっぷり入るLLサイズを。普段の我々の生活の中で、この商品を通して屏東の豊かな自然をより身近に感じていただけることを願い、開発しました。

 

[AliAli頑皮雕 / 革彫刻と手紋の伝統を発展させた新しい革小物 ]


「AliAli頑皮雕」は、屏東に帰郷した若手職人により設立されたブランドです。原住民パイワン族の伝統工芸である革彫刻と手紋(刺青)の文化をミックスし、若い解釈で伝統文化を残す挑戦をしています。
手紋(手の甲の刺青)はパイワン族につたわる伝統文化で、特別な地位の女性しか入れることのできない地位の象徴でした。手紋の模様は一族の社会地位を示し、日本でいえば家紋のような存在です。日本統治時代の手紋禁止や生活の変化などにより、現在は数名に残るのみとなっています。
今回、手紋の柄を分解してリデザインし、現在の解釈で普段のお出かけに使えるサコッシュの新しいシリーズを開発しました。原住民文化を多くの人に気軽に伝えるきっかけとなるブランドです。
模様は、太陽紋と掛勾紋を幾何学的にアレンジし組み合わせた「block」、原住民族が大切にしているユ リの花や、台湾のフルーツなど植物をモチーフにしたものと手紋の太陽紋や掛勾紋を組み合わせた「botanical」、パイワン族神話で太陽神が産んだ卵を百歩蛇が守ったという逸話から、太陽紋をメインに蛇の頭を模したモチーフを取り入れた「sun」の三種類。それぞれの模様が革に型押し(エンボス加工)で施されています。使い方は背中、胸元、肩、腰とユーザーによって使い分けできます。構造はシンプルですが手軽さとエレガントさを兼ね備えたバッグが出来上がりました。共通して入る「太陽紋」は守護と祝福を意味します。作り手、使い手、そして屏東の豊かさが続くことを願った商品です。

 

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ギフトショーでお披露目


2024年9月4日(水)~6日(金)の3日間にわたり開催される「第98回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2024 第16回LIFE×DESIGN」において、我々セメントプロデュースデザインが運営する集合ブース「SESSION(セメントプロデュースデザインが開発に伴走した各地の事業者さまの商品が一堂に会する集合ブース)」において開発した商品をお披露目し、日本のバイヤーを中心にメディアなど多くの方々に知っていただき、取引に繋がるまでのフォローをお手伝いさせていただきました。

 

企画展「奥台湾」の開催


セメントプロデュースデザインの運営する自社ショップ「コトモノミチ」2店舗(東京・大阪)にて、2024年9月5日(木)〜11月4日(月祝)の間、今回の2ブランド商品のお披露目&販売会を含むPOPUP企画展「奥台湾」を開催しました。ギフトショーとは違い一般ユーザーの方々をターゲットに、商品の魅力だけでなく、屏東県の自然・文化・土地・暮らし、台湾原住民に伝わる伝統などを知っていただくきっかけとなるイベントです。

※台湾原住民・・・台湾の先住民族を指す中国語の呼称。現在、台湾政府により16民族が認定されているほか、同化が進んだ諸民族もあわせると、台湾人の大半が何らかの原住民のルーツをもつと考えられている。

 

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【Credit】
■主催
屏東県政府
■運営
寰緱社
■全体ディレクション・アートディレクション・企画展運営
CEMENT PRODUCE DESIGN LTD.

■参加事業者(新商品開発)
・桃布里文化創作空間
・Ali Ali頑皮雕
・PULIMA
■参加事業者(企画展商品販売)
・花草釀cemel
・寈風繡
・佳興部落SIKAU
・許春美工作室