時は2007年12月–。そう、12月と言えば彼ら“C社”が例の年賀状制作に日々営む暦。記者歴3年目を迎えた私は、事件にも幾分鼻が利くようになり、新人記者を使い早々に捜査を開始した11月下旬、驚愕の情報を入手することに成功した。なんと“C社”の面々が“悪霊”に取り憑かれているという。今までにないスクープの予感。ついに私たち記者の中にも犠牲者が発生してしまうのか?私は言う「『覚悟』を決めろ!!」。しかし、“C社”の恐怖感に煽られ体が思うように動かない様子の新人記者たち。私は続ける「大切なのは『真実に向かおうとする意志』なのだ!!」。何故かテンションが上がる私。 12月1日。ついに“C社”が行動を開始したとの情報をうけ、私も現場へ向かう。現場にはF口氏とY野辺氏の姿が。が、私は我が目を疑った。吐き気をもよおす邪悪。彼らは、私たちを嘲笑うかのように“悪霊”のことなど気にもせず、わざとらしく呑気にコミックを読み続ける。まるで私達の存在に気づいているかのごとく。怒りに震えると同時に、自らの高鳴った感情に恥すらも感じた瞬間、ふとテーブルに目をやると大量に拡大コピーされたコミックの1ページ。「この行動には何か大きな意味がある」そう感じた私の記者魂は、現場に留まり取材を続ける。さらによく見ると、そのコミックはなんと、世界が認める奇才“荒木飛呂彦”大先生の代表作「ジョジョの奇妙な冒険」であることが判明。“荒木飛呂彦”大先生と言えば、私が幼い頃から尊敬して止まない日本を代表する漫画家の一人で、なんとその功績は、2006年に文化庁が企画した“日本のメディア芸術100選”で、マンガ部門2位に選出されたほど。まさか“悪霊”とは!?恐らく今回の事件の全貌を握る鍵はこの「ジョジョの奇妙な冒険」にあるに違いない。一度は閉ざされた道が、昇りゆく朝日よりも明るい輝きでさらに道を照らしている。そして我々がこれから『向かうべき、正しい道』をもッ!さらにテンションが上がる私。 同日、しばらくコミックを読み続けるF口氏とY野辺氏。「こいつら本当に仕事しているか…?まさか、私の直感が外れたのか?」などと感じ始めた矢先、東京からK谷代表が帰ってきた。刹那、彼らは一切の言葉を発することなく、別室へ移動。少しの打ち合わせの後、一人一人、人間の関節可動範囲を限界まで酷使する独特なポーズを取り始めた。が、どうだろう。一見すると奇妙で吐き気さえ覚えるこのポーズ。しかし、そのポーズには、“エレガントさ”と“力強さ”という、正反対の要素が融合しているかのような『美しさ』さえ感じる。するとK谷代表が、その強靱な下半身を軸に、腰をぐるりと捻りカメラの方に振り向くとこう叫んだ。 12月8日。彼らがまた動き出したとの情報をうける。そう、例年のごとく、パネル作成にかかるというのだ。豹柄のダウンベスト(JUNMEN)を着た生粋のジョジョマニアS谷氏を筆頭に着々と“C社”の面々が衣装会わせを始める。「これはッ!?」我々はこの衣装に見覚えがある…このキャラクターを知っている。そう、これが“悪霊”の正体、「ジョジョ」を愛するものなら一目で分かる“スタンド”だ。さらに、よく見ると、今回の衣装はすべて“紙”でつくられている。相変わらずのクリエイティブ魂。紙だけで見事に作中に登場する“スタンド”を再現している。私は、思い切って突撃取材を豹柄ダウンベスト(JUNMEN)S谷氏に申し入れた。が、彼のテンションが異常に低い。聞くと、そのテンションの低さには彼が演じる“スタンド”が影響しているらしい。それが、写真左から2番目上段の顔面を絵の具で塗られ奇妙なメイクを施された、もはや誰が演じているのかも分からないキャラクター。今回の衣装デザインはすべて彼が担当し、本プロジェクトの統括を任されているのにもかかわらず。彼は言う「これ、誰がやってもいっしょじゃないっすか。。代表。。」代表は言う「おいしいやん。」彼のテンションとは相反し、動悸が激しくなるほどのテンションの私。 ※ジョジョを知らない方のために解説させていただくと、“スタンド”とは生命エネルギーが作り出すパワーある像(ビジョン)で、超能力を具現化したようなものです。オタクとか言わないでください。 全員の衣装合わせが終わると、事務所の4階にて写真撮影が始まる。先ほどまではテンションが低かったS谷氏も、写真撮影が始まるとそのテンションも一変。フォトグラファー、スタイリスト、アートディレクターと一人3役をこなしながら着々と撮影を続ける(年賀状作成の間、彼は仕事を一切していません)。 Y野辺氏「ちょっ手の部分なおしますね…」 K谷代表「無駄だ」 S谷氏 「後ろのチューブも外れかかってますよ…」 K谷代表「無駄だ」 Y野辺氏「ちょっじっとしといてください…」 K谷代表「無駄だ」 S谷氏 「直せませんやん…」 K谷代表「無駄だ」 K谷代表「無駄ァァァァアアアア!!」 …うざい。。 役になりきるK谷氏。 編集部に送りつけられた、謎のビデオテープ。 12月10日。1回目の取材を終え、その編集作業にかかる月曜日の昼下がり。我々編集部に奇妙な1本のビデオテープが送られてきた。差出人不明で送られてきた(現金着払い)この奇妙なビデオテープのタイトルラベルには「無駄ァァVSオラァァ」とだけ書かれている。 自らの私利私欲のために、無理矢理相手役をやらされる新人T田氏。私はこの行為を許すことができず、“C社”に思い切って電話取材を敢行した。 S記者 「きさまー いったい何人の社員をその私利私欲のために犠牲にした!?」 言葉を失う私。と、同時にテンションはMAXに。 12月15日。舞台はイタリア。ついに彼らは一昨年のアメリカに続き、ヨーロッパにまでその悪意をのばす。一昨年、お年玉の積立貯金を使い果たした我々にとって、この出費は遺恨の極み。冬のボーナスが一瞬のうちに消える。 名シーン再現をスタッフに無理矢理やらせていたK谷代表が、突如として時間を止めた。止まった時の中で彼が言う。 というわけで皆様あけましておめでとうございます。今回のセメント年賀状は最近TVや雑誌でブームになりつつある「ジョジョの奇妙な冒険」を題材にやらせていただきましたが、いかがでしたでしょうか…?ハイ。年始からスベる覚悟はできてます!意味が分からなかった方々すみません!バカなんです!でも、「ジョジョの奇妙な冒険」は世界一チィィィィッ!!また、記事の中にジョジョの作中で登場する“名言”をいくつか入れ込んでたりするので、お暇な方はコミックス片手に探してみてください。それでは、本年も、無駄ァァのない絶妙なデザインを目指してセメント活動を邁進して参りますので、どうぞ宜しくお願いいたします。 最後に、荒木飛呂彦大先生、及び集英社様、関係者各位様に深くお詫び申し上げいたします。今年もよろしくお願いします。 PS.生粋のジョジョマニアである私は、スゲーッ 爽やかな気分です。新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーにッ! SPECIAL THANKS. 他意はございません。もしもご気分を害された方申し訳ございません。また各関係者の皆様には深くお詫び申しあげます。Respect for ジョジョの奇妙な冒険.
「きさま!見ているなッ!」「!!」驚く我々。超望遠カメラで隣のビルからの撮影にも関わらず、その気配を感じ取られた。我々は必死に逃げた。戦おうなどと考えはしなかった。どんどんテンションが上がる私。
次々に写真撮影を進める中、S谷氏と同じように顔を絵の具で塗られた男性が。そうもちろんこの方、営業部長Y野辺氏。絵の具で塗られるだけでなく、顔面にはY野辺氏の“心の中”が書き込まれている。哀れ…。涙ながらの写真撮影が続くなか、権力と邪悪の化身 K谷代表が嘲笑する。
「クックック…」。
最後に、諸悪の根元 K谷代表の写真撮影が行われる。先ほどは涙していたY野辺氏とS谷氏も、代表ということもあり熱心に写真撮影を続ける。その姿にまた涙する私。すると、写真撮影を続ける中、代表の衣装が崩れる。スタイリングに入るY野辺氏とS谷氏。
K谷代表「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄…」
K谷代表「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」
K谷代表「最高に「ハイ!」ってやつだァァハハハーッ!」
さすがの私もテンションを下げる。
「まさか…」
見るのをためらうほどの悪意を感じる。が、私に希望の眼差しを向ける新人記者達。覚悟を決めた。
「『覚悟』とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開くことだッ!」
K谷代表「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」
新人社員の一人が言った。
「K谷代表ォォオオーーッ」
「 君がッ 泣くまで 殴るのをやめないッ!」
K谷代表が返す。
「貧弱! 貧弱ゥ!」
まさに悪のカリスマ。ボーナスのことは忘れ、怒りを抑えながら取材を続ける。今回も当然2段構成の撮影で、このイタリアでは先日の“スタンド”を繰り出す“本体”キャラクターになりきっている。K谷代表は今年36歳。いい大人が何をやっているんだと思いながらも、生粋のジョジョファンである私のテンションは上がる一方。
「2…3 5…7… 落ち着くんだ…「素数」を数えて落ち着くんだ…「素数」は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……わたしに勇気を与えてくれる」
すると彼らはコミックを片手に、作中の名シーンを再現しだした。年賀状撮影どころではない。ただのコスプレ好きのオフ会。コミケ。しょこたんも月までぶっ飛ぶほどの衝撃の奇妙な光景が延々と続く。。。 しかし、私のテンションはこれから「確実」におこるであろう真実を前にMAXを越える。 確実!そう、コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実。
「とるにたらぬ人間どもよ! 支配してやるぞッ!! 我が「知」と「力」のもとに ひれ伏すがいいぞッ!」
キャラクターの持つ“悪”とK谷代表の“悪”がシンクロする。 我々は、止まった時の中でどうすることも出来ず、ただ、時が再び刻み始めるのを待つ。。その時、我々が目にするのものはッ…!!そして時は動き出す!!あけましておめでとうございます。