人面犬…。口裂け女…。人々の間で、誠しやかに囁かれる都市伝説。それはいつの時代にも存在し、人々を恐怖と興奮の渦に巻き込んでいく。そんな都市伝説が、C社が本社を置く大阪は京町堀にも存在するというのである。どうやらC社一行は”10″という何の変哲もない数字にその思考を奪われている様子…。そこに込められたものは神の所業か、悪魔の意志か。今回はそんな”10″にまつわる事の真相を追求する。信じるか、信じないかは、あなた次第…。 現場に到着した我々は、大量に出力された”青いバラ”に目を奪われる。そこで作業する男性が一人。もちろんこの方、営業部長山野辺氏。 氏は、パネルに例の青いバラを貼り付け、まるでマリオネットかのごとくまったく迷いの無い動作で一つ一つバラを切り離していく。 「…じ…ぅ……。…ゅ…………ん」。 木の葉のざわめきにすら掻き消されそうな、細く小さな声。まったく聞き取れない。我々は意を決し、氏に突撃取材を申し込んだ。 「なんて言うかな。こう。やっていかなアカンと思うんよ?僕らも。僕ら言うたらやっぱりしていかなアカン思うんよ。そう思てやり始めたんですよね。バラパネルを。なんかこう、不況不況言うても実際に明確な目標もって動ける人って中々いないと思うのよ。上司としてもスタッフたちに見せていかなアカン思とるのよ。やっぱりバラパネルがあるだけで全然違いますしね。スタッフ10人が一つになってる!って思うのよ。ね?僕なんですよね。最初にバラパネルやろう言いだしたん。やる前とやった後じゃ全然ちがいますね。」 「そう思て次に始めたのがこの顔はめパネルなんよ。これをスタッフ10人みんなで付けられたらなって。やっぱりどうしても営業セクションより制作セクションのスタッフの方が徹夜もあったりでしんどいと思うんよ。そんな時にみんなで出来たらって。それで一瞬でも和んで志気も雀の涙ほどでええから上がらんもんかなって。思てるわけなんですけどね。上司としてもスタッフたちに見せていかなアカン思とるのよ。やっぱり顔はめパネルがあるだけで全然違いますしね。スタッフ10人が一つになってる!って思うのよ。ね?僕なんですよね。最初に顔はめパネルやろう言いだしたん。やる前とやった後じゃ全然ちがいますね。なんで鼻によるん?」 「これ分かる?これ。auのLEDで光るneon言う携帯を腕にセットしてんねんけど。肩も見てや。カメラのっけてみてんや。クオリティ高い思わへん?え?分からへんのん?プレデターやん。プレデターのモノマネですやん。まぁ、まったく関係ないんですけどね。」 支離滅裂な山野辺氏から逃げるように引き返したのは10日前。この日は、山野辺氏が制作に励んでいたバラパネル・顔はめパネルをスタッフ10人で装着し、事務所前の道路で何やら儀式が行われる様子。これも”10″という悪魔の意志に近づく第一歩らしい。しかし、その姿ときたらどうだろう。奇怪という言葉がこれほど当てはまる人間はそうはいない。スタッフの一人が発する。「ドラクエみたいやわ。」その視線の先には植山氏と新人アルバイト勝山氏が。氏達もまた、山野辺氏同様、何かに取り憑かれた形相で我々を威嚇する。我々は身の危険を感じ、事務所2階に避難することに。 そこに居たのは、セールスマネージャーの津禰鹿(ツネカ)氏。どうやら彼女は先ほどの奇怪な連中とは違い、至極まともな様子。「よかった。」我々は胸をなで下ろし、彼女が用意してくれたお茶に手を伸ばす。 「す、すみません。お茶が多いようですが。。」 不穏な空気が流れる。我々はお茶に手をつけることなく颯爽と編集部に退散した。 その後、この女性は行方不明にー。 編集部に帰還した我々は、早速編集作業に取りかかる。しかし、編集作業中も不穏な空気感は払拭されず、皆そわそわとしたまま作業に没頭する。すると、新人記者が私の後ろで呆然としている。問い詰めても何も答えない。私は、彼が編集中のビデオに目をやる。それは先ほどの儀式の準備風景。そこには…。 あなたには見えただろうか?画面左上にハッキリと浮かぶ男の顔。我々はこの顔に見覚えがある。そう、言わずとしれたC社代表金谷氏の顔だ。これはきっと我々への忠告なのであろう。しかし、このような中途半端なまま取材を中段するわけにはいかない。事の真相はすぐそこにー。 悪魔の忠告から10日後。またもや彼らが動き出したとの連絡をうけ現場へと集結する午前10:00。前回とは一遍し、まるで漫画にでも出てきそうなハゲたカツラを被ったC社の面々。どうやら車でどこかに移動する模様。我々も直ぐさま後を追う準備を始めたが、サングラスをかけた見慣れない顔が。M氏だ。聞くと、氏は相当な手練れだと言う。取材を試みた。 M「女性ですか?ええまぁ、僕にかかればイチコロ(死語)ですよ。」 自信を纏いながらも、あくまで謙虚に”10″を押す氏。 M「今日どこ行く?」 まるで以前から約束していたかのように話を切り出す氏。多少強引ながらも親近感を覚えるテクニック。 M「ちょっと写メとろか。」 深い。写真を撮る=個人情報を手に入れた氏は一気にたたみかける。どうすることもできない女性。しかしまんざらでもない女性。※十三…大阪淀川区の風俗街 脱線した取材を立て直すため、気合いを入れて密着する我々。到着したのは昨年観光名所にもなった大阪府内の通称マキ糞公園。そこには、先日の奇怪な姿で一つになった”10″の数字が目立つパネルと、ハゲづら、Tシャツ、短パン姿のC社の面々。どうやらホームレスを模しているようだ。それぞれが迷いの無い動作でテキパキと定位置につく。「まさかコレは…?」我々記者班の脳裏にはいつもの映像が浮かぶ。そう言えば今は12月…。まさかこの一連の事件は…、C社年末恒例の…、あの…。…しかし、”10″に込められた真相はまだ闇の中…。最後まで諦めずに取材を続ける我々。その時、一人列から離れ、公園に設置されている鉄棒へと向かう植山氏の姿がー。 鉄棒に手をかけると、突如こう言い放つ植山氏。大車輪…?訳も分からずファインダーを覗き続ける我々。どうやら鉄棒にまたがり、そのまま連続回転するようだ。冷や汗が頬をゆっくりと伝うー。植山氏が言う。「10回まわりますわ。」 皆様あけましておめでとうございます。弊社は今年の10月に10周年を迎えます。これからも目指していく、カタチに囚われない”Formless”なクリエイティブと、昨年大ヒットを跳ばした”ホームレス中学生”をかけてみましたが、そう言えば都市伝説っていうのも流行ってたなぁなんてこの新聞製作直前に思い立ち、都市伝説とホームレス中学生をどう繋げようか悩んだあげく、収集がつかなくなった私、どうも記者渋谷です。これも”Formless”なクリエイティブの一つではないでしょうか。うまいことまとまったところで(まとまってない)以下、弊社からのご挨拶です。 金谷「1人から孵化したCEMENT PRODUCE DESIGNが大きく派手に浮き上がることも、大きく深く沈むこともなく、デザインというフィールドでジャンル・カタチを問わず[FORM LESS]に粛々と活動し続け、ついに今年10月で10年目で10人(予定)に。クリエイティブサービスの進化と、クリエイトを志す後進への進路もさらに切り開いていきたいと思っております。これからも、このさきも。まとまりすぎず、まとまっていく…今年もCEMENT PRODUCE DESGINを宜しくお願い申し上げます。」 というわけで、本年も何卒宜しくお願い申し上げます。 SPECIAL THANKS. 他意はございません。もしもご気分を害された方申し訳ございません。また各関係者の皆様には深くお詫び申しあげます。Respect for ホームレス中学生. The shooting location was 山田西第2公園.
微かに言葉を発する氏。
「?」
その手の先には何故か”10″杯のお茶が。
「あら…?すみません…。うっかりしてました…。」
※氏の希望により、氏名、写真は控えさせていただく。
記「ちなみに経験の方はどれくらい…?」
M「1…10…100……。やっぱ10くらいッスかね。」
女「えっ?」
M「いや、言うてたやん。マジパネェ。ベリバ。」
女「言うてませんやん。」
女「えっ?」
M「撮るよ~。10÷5は~」
M・女「2ィ~。」
M「よっしゃ。十三ですっぽん食べよう!」あけましておめでとうございます。