代表インタビュー:スタッフ募集に向けて(金谷 勉)

※このインタビュー記事は、「 すみだの仕事 」の求人記事より抜粋したものです。


挑戦できる環境を生かし、自分自身の可能性を広げてほしい

「当社は今年で24期目。創業30周年に向けて、改めて組織のあり方を見つめ直したいと考えています。これまでも『コト(技術や課題)』・『モノ(開発)』・『ミチ(販路)』の一連を考えて動く『考動』していくことがデザインだという信念を大切にしつつ、社会から求められる役割と自分たちが目指すあり方を照らし合わせながら成長してきました」

創業当初はデザインの制作業務を請け負う傍ら、セメントプロデュースデザインは自分たちのクリエイティブを流通することを目指して、自社商品として「Happy Face Clip(ハッピーフェイスクリップ)」を開発し、販売し始めました。

 

スマイルマークのクリップ「Happy Face Clip」

 

この商品がきっかけとなり、日本各地の小さな町工場や職人からの相談や依頼が増加。その代表例が、愛知県瀬戸市で陶磁器の型製造を本業とする原型職人との出会いでした。

「クリップを卸していたお店から紹介していただいた職人です。実際に工房を見ながら話を聞くと、商品開発のお悩みだけでなく、陶磁器業界の厳しい現状も知ることになりました。難しそうだと思いましたが、なんとかしたいと思ったんです」

そこで金谷は、職人のもつ緻密な手彫りの技術に注目。手編みのセーターを思わせる模様を石膏型に彫り込んだニット柄のカップ「Trace Face(トレースフェイス)」を開発しました。大量の試作を重ねる苦労の末に完成したこの商品は、有名なミュージアムショップや人気雑貨店に導入されたことから大きな注目を集め、ロングセラー商品となっています。

 

ニット柄の陶器カップ「Trace Face 」

「この経験を通じて『考動』の大切さを実感しました。そして、下請けの仕事がメインだった職人と一緒に自社商品を作り、仕事のあり方を変えていく過程で、製造業に共通する課題も見えてきました」

そこで2011年には「みんなの地域産業協業活動」を立ち上げ、町工場や職人との連携を全国に拡大。この活動が波及し、行政や金融機関からの依頼に応えて、商品開発を実践的に学ぶゼミも全国で展開するようになりました。

さらに、開発に携わった商品を自分たちで販売する場として、2014年には東京支社でコトモノミチをオープン(2019年に現在の墨田区に移転)。2020年には同店舗を大阪本社でもオープンしたほか、最近は台湾やシンガポールなどを中心に海外での販路開拓にも取り組んでいます。

このようにデザインやものづくりの役割を見極めながら、セメントプロデュースデザインは着実に事業の幅を広げてきました。

「これまで様々な切り口でデザインに取り組んできましたが、自分たちが面白いと思うことをできる会社でありたいという思いは創業時から変わらず根底にあります。そして、つくり手の方々の思いに自分なりの使命感や思い入れを重ねて、自分ごととして仕事に取り組んでいくのがセメント流のデザイン。今回新たに募集するスタッフにも、自分自身の可能性を広げたい、自分の思いを結実させたいという気持ちを大切にしてほしいと思っています」

 


 

金谷 勉(かなやつとむ)
有限会社セメントプロデュースデザイン 代表取締役/クリエイティブディレクター

1971年大阪府生まれ。京都精華大学人文学部を卒業。
大学卒業後、企画制作会社に入社。広告制作会社勤務を経て、1999年にデザイン会社「セメントプロデュースデザイン」を大阪にて設立。
大阪、京都、東京を拠点に企業のグラフィックデザインやプロモーション、商品開発のプロデュースに携わる。
2011年から全国各地の町工場や職人との協業プロジェクト「みんなの地域産業協業活動」を始め、600を超える工場や職人たちとの情報連携を進めている。
職人達の技術を学び、伝える場「コトモノミチat TOKYO」を東京墨田区に、大阪本社に「コトモノミチat パークサイドストア」を自社店舗展開。
経営不振にあえぐ町工場や工房の立て直しに取り組む活動は、テレビ番組『カンブリア宮殿』や『ガイアの夜明け』(テレビ東京系列)で取り上げられた。
各地の自治体や金融機関での商品開発講座を行い、年間200日は地方を巡る。
京都精華大学、金沢美術工芸大学、女子美術大学でも講師を務め、2018年京都精華大学 伝統産業イノベーションセンター特別共同研究員に就任。2019年1月(地独)京都市産業技術研究所 アドバイザーとして就任。2021年より京都精華大学客員教授に就任。
自著に『小さな企業が生き残る』(日経BP)。