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新商品「FRUWA」が切り拓いた100年企業の未来

インタビュー記事

新たな開発の扉を開いた「神戸市のコラボLAB」  

 弊社は現在、従業員17名(社員3名、パート14名)で、お菓子の製造、特に「はさみ焼き」を主要な事業としています。瓦せんべいやワッフル、FRUWA、MELTYWAなどを製造しており、最近は、チーズチップスやベルギーワッフルのラスクを新たに開発中です。

  セメント様との取り組みを始めたきっかけは、神戸市が主催する新商品開発プログラム「コラボLAB」に申し込んだことでした。その時、なんとかしたかった商品が、FRUWAの前身の商品です。FRUWAは元々、アンリ・シャルパンティエさんのOEMで作っていたものを、先方がもういらないということで権利を買い取り、自社商品として始めたものです。

 しかし、今のFRUWAになるまでに4回以上パッケージ変更を試みましたが、全くうまくいきませんでした。社内にある袋でシールを作ったり、近所のデザイナーに依頼したりしましたが、全然売れませんでした。3回目には、元〇〇屋のバイヤーだったという人に十数万でデザインを依頼しましたが、印刷トラブルが発生し、結局白い箱のまま作って、売ったという過去もあります。

 中身の生地や味も同時並行で改良してはいましたが、課題はパッケージ。どうやったらいいパッケージの商品ができるのか日々模索していました。

「売るための商品開発プロセス」に確信を抱き依頼を決意  

セメント様への依頼に踏み切った決め手は、金谷さんがコラボLABの授業で教えてくださった、商品開発プロセスに強い確信を抱いたからです。

 以前、私がデザイナーさんへしていた依頼は「おしゃれなパッケージを作ってください。」というざっくりしたものだったので、具体的な売り先のイメージなどもなく、意思疎通がうまくできていませんでした。

 金谷さんは開発ゼミで、「どうやって・何を・誰に売るのか」というところが重要ということを教えてくださいました。そして、この売るまでの開発のプロセスを自社で明確に組み立てた上でデザイナーへ依頼しないと、結局は思ったものと違うものができてくると教えてくださいました。

 金谷さんの熱量がすごかったので、「この人に頼んだら間違いないかな」と直感的に思いました。当時、弊社はPL(損益計算書)が悪く、売上も悪かったので「なんとかしないといけない」という切迫した気持ちも強く、それが依頼を後押しした理由の1つでもあります。

 コラボLABでは、味の決定と味の種類を増やすこと(3種類からパインとレモンを加えて5種類程度)まで進めました。生地もフルーツに合うように見直しをかけました。また、コラボLABの途中でギフトショーへの出展が決まったため、その時に箱のサンプルを作り、デザインもお願いしました。

投資へのプレッシャーと社内「ギスギス」ムードの打破  

セメントさんには、FRUWAのパッケージデザイン、2017年のギフトショーブースデザイン、MELTYWAの新商品パッケージ、そして会社自体のブランドロゴの制作もお願いしました(2024年2月)。

開発過程では、先行投資をしたことに対するプレッシャーにとても負けそうでした。弊社にとっては、すごいお金を注ぎ込んで、本当にうまくいくんだろうかという不安が非常に大きく、本当に「背水の陣」のような気持ちでした。

 このプレッシャーは、三嶋さん(セメントスタッフ)がこまめに連絡をくださり、相談させてもらったことでなんとか乗り越えることができました。今となってはFRUWAが当たり前の存在になっていますが、当時は「この決定でいいのだろうか」とすごく悩んでいたことを思い出します。

 そのプレッシャーを乗り越えた結果、会社の雰囲気はすごくよくなりました。以前は会話もないほど社内がギスギスしていましたし、私と社員とのコミュニケーションもほとんどありませんでした。

 しかし、商品のパッケージも変わり、販売数も増えてきたことで、今は非常に良い雰囲気になりました。社員からは、「ベイマックス」などといじられるような関係になり、8年前にはなかったコミュニケーションが生まれています。

FRUWAがもたらした「強い武器」と3年連続黒字化  

商品開発の成果は、事業収益に現れ、FRUWAをきっかけに、ワッフルのOEMなど別の案件にも繋がり、3年連続で黒字を達成しました。 

 特に、FRUWAが売上全体の25%を占めるまでになりました。当時は自社商品の売上は、全体の5%程度だったのが、今では自社商品が40%を占めており、これは大きな変化だと感じています。

 FRUWA以降の新商品開発においても、最初のコラボLABで教わった考え方を生かして進めています。デザインに至る前の、資料作りなどは自社だけでもできるようになってきたと感じています。

 FRUWAがない頃、私は瓦せんべいを「武器」に飛び込み営業をしていましたが、今思うとすごく弱い武器で戦っていたな、と思い出すとびっくりします。しかし、FRUWAという「強い武器」を手に入れたことで、営業が格段にしやすくなりました。FRUWAは主に高級スーパー様向けによく売れています。

 認知の面では、「FRUWAを見たよ」「美味しかったから買いに来た」というお客様からの声が増えてきました。認知はまだまだ足りないと感じているので、今後はSNSも活用し、知ってもらい、食べてもらってリピートにつなげるというサイクルを両輪で回していきたいと思っています。

「自分の子供も入れたくなる会社」を目指して  

社員さんがFRUWAを自分で購入したり、知人にプレゼントしたりしてくれることが、私にとって非常に嬉しいです。社員が「自分でこれ作ってるんですよ」と胸を張って言える商品ができたのは、大きな成功だと思っています。

 退職率も昔と比べると減りましたし、28歳のパートさんが「FRUWAを見ました」と言って入社してくれた例もあり、会社が若い人たちにも魅力的に見られるようになってきていると感じています。

 私の使命は、社員の皆さんに作っていただいたFRUWA(自社商品)を広めることだと思っています。そして、社員さんが「自分の子供も入れたくなるような会社」にしていきたいと考えています。

 そのためにも、社員さんが生き生きと来てもらえるような会社にしていかなければならないと思っています。

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