池田泉州銀行様と連携し、「近畿経済産業局 令和6年度中小企業等知的財産活動支援事業補助金事業」として中小企業の持続的な成長を支援する新事業開発ゼミ「CHANGE」を開催しました。
新たな価値の創造を起点として持続可能なビジネスを実現する
社会・経済環境が、安定的なモノの供給が市場を牽引する20世紀型から、体験や共感を求めるユーザーの多様な価値観が市場を牽引する21世紀型へと変化する中、経営の牽引力の源泉となる知財が果たす役割は増しています。企業がユーザの多様な価値観に訴求するためには、価値創造のメカニズムを機動的・継続的にデザインしてイノベーションを創出すること、そのために知財が価値創造のメカニズムにおいて果たす役割を的確に評価することが期待されます。
令和5年に中小企業によるデザイン経営の推進を目的とした、「中小企業のためのデザイン経営ハンドブック2 未来をひらく デザイン経営×知財」が公表されました。デザイン経営の考え方を発展させ、デザイン経営の新たなモデルを示すと共に、デザイン経営と知財活動の関係性に着目し、デザイン経営の推進力を生み出す「6つの知財アクション」を示されています。
今事業では、中小企業にとって重要な課題である売上(収益)拡大につながる新商品の開発や既存事業のブラッシュアップ等の価値創造を起点にした取組みにより、持続的な成長を支援することを目的としました。
[ CHANGEの土台となる38の事業開発ステップ ]
工程の前半では、プロジェクトの目的を共有した上で、自社が持つ技術や素材の強みを明らかにしていきます。自分たちが誇れる技術を用いてモノを作らなければ、他にないものは生まれないのです。方向性やコンセプトが固めて、デザイン・商品のアイデアを考えていきますが、この段階でも何のためにつくるのか、誰に売りたいのかということをクライアントと共によく確認しています。またこちらが提案したデザインに対する判断軸を定めるためにも、展示会・メディアなどのリサーチをお願いしており、文脈の共有に努めております。ここで、紹介しているステップは、クライアントによって変更することもあり、現在も試行錯誤を重ねながら、方法論のアップデートを行っています。
新規事業開発ゼミCHANGEの内容
新規事業開発ゼミCHANGEでは、全8回の講座で実施。はじめに自社の事業や商品を見直しから始め、自社の資産や強み、競合の取り組みなど、徹底した現状分析を行います。その上で、展開したい業界や商品イメージ、販路や販売方法の検討といった商品企画開発に取り組んでいただきました。事業規模や実力に応じ、つくれるもの、つくりたいもの、つくるべきものを検討し、参加事業者自身で商品企画を完成させていきます。都度、自社らしさを活かしたコンセプト等をワークショップや講師とのディスカッション等により検討し、最終的には参加者自身で商品企画や新サービス等の企画を完成させ、流通バイヤーや支援者等の前でプレゼンテーションを行いました。
新規事業開発ゼミCHANGEの実施記録
[ 第1回:自社分析]「設備・技術・素材」を十分に分析する
自社の現状について整理するため、保有する設備/機械やそれを使った技術、あるいはできる素材の特性をまとめ、経営資源を分析しました。
[ 第2回:SO分析]「社内外の有形・無形資産」を拡張する
SO分析を行い、自社の事業内容において他社と差別化できる強み(Strength)と機会(Opportunity)を掘り起こしました。
[ 特別講義①] バリューチェーンから考える“知的財産の実践的活用法”
弁理士の岡 恵 氏より、「知的財産の実践的活用法」と題して、特許・意匠・商標など各権利の特徴や目的や、バリューチェーンとの関係や権利保護、侵害対策などについて、実例を交えて講義を実施していただきました。
[ 第3回:ポジションの確認] 自社の現状と目的、競合を確認する
現状を踏まえ、達成したい目的や作りたいモノを設定しました。そして、それによりもたらされる社会的な役割を明示し、自社が目指す立ち位置を明確にしました。
[ 第4回:参加企業訪問] 生産体制と製造能力の確認
製造現場を実際に訪問し、状況をヒアリングしました。現場管理者の意見を参考に自社商品の企画に向けて個別アドバイスを行いました。
[ 第5回:コンセプト立案]「課題と想い」をもとにビジョン設計を行う
自社や業界の課題を特定し、解決に向けた自社の強みや想いを込めた自社商品のブランドコンセプトを固めました。
[ 特別講義②] 新たに価値を創造する、とは。新事業開発を起点にした価値循環の創出
近畿大学経営学部の山縣正幸 教授より、「新たに価値を創造する」をテーマに、イノベーションやサービスドミナント・ロジックの概念、価値が創出と享受の関係性から生まれることについて講義を実施していただきました。
[ 第6回:事業・商品の企画] 新事業の全体像を構築する
コンセプトを具現化する商品のアイデアを整理し、全体像をイメージしながら具体的に設定しました。
[ 第7回:事業・商品の計画] 新事業・商品の計画書を作成する
事業のコンセプト、商品のアイデアやキャッチコピー、ターゲットや販売計画を整理し、製品化に向けたプランを練りました。
[ 第8回:プレゼンテーション] 新事業・商品の計画書を発表する
計画書をバイヤーの方々に向けて発表し、フィードバックをいただくことで、新商品のリリースへとつなげていく機会としました。
成果報告冊子の制作(一部抜粋して掲載)
池田泉州銀行 / The Senshu Ikeda Bank, Ltd
金谷 勉 / Tsutomu Kanaya(Project Director)
三嶋 貴若 / Kiwaka Mishima(Project Director)
岡 恵 / Megumi Oka(弁理士法人オフィス大江山 代表弁理士)
山縣 正幸 / Masayuki Yamagata(近畿大学経営学部 教授)