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着物依存からの脱却 – 新ブランドSOMEAができるまで

インタビュー記事

「着物だけでは未来がない」5つの危機感と課題


当時、私の中で一番大きかったのは、「着物の仕事だけでは工房の未来がないかもしれない」という強い危機感でした。具体的には、5つの大きな課題を抱えていました。
1つ目は知名度の低さです。呉服メーカーから独立して間もなかったため、工房の存在を知る人はほとんどおらず、他にはない新しい挑戦をして知名度を上げる必要性を感じていました。
2つ目は、継続的に販売できる「商品」がないことです。扱っていたのは高級な着物や帯などの「作品」ばかりで、もっと暮らしに取り入れやすい価格帯のアイテムが必要でした。
3つ目と4つ目は、和装業界への依存と顧客の高齢化です。和装業界全体が縮小傾向にあり、お客様も50代以上が中心だったため、着物以外の収入の柱を持ち、幅広い世代に友禅染の魅力を届けたいと考えていました。
そして5つ目が、人とのつながりの少なさです。仕事は口コミ中心で人脈も和装業界に限られていたため、異業種の方と出会い、新しい価値観に触れたいという思いがありました。

こうした状況の中で、何か新しいことに挑戦しなければ先が続かないかもしれないと感じたことが、商品開発に取り組もうと思った一番大きな理由です。


諦めかけていた商品開発。背中を押したセメントの「熱意」


以前から商品開発には興味があり、ブランドづくりの本を読むなど独学で試行錯誤していましたが、限界を感じていました。資金的な余裕もなく、本格的な開発は半ば諦めていた時に、京都市が募集していた商品開発ゼミのチラシを見つけたのです。そこでセメント様(セメントプロデュースデザイン)のことを知り、デザインされた数々の魅力的な商品に心を動かされて、まずは説明会に参加してみることにしました。
説明会で金谷社長のお話を聞き、その熱意や本気度が従来の支援プロジェクトとはまったく違うと感じ、「これは絶対に価値がある」と直感しました。また、小規模事業者さんの開発事例を紹介されたことで、「自分にもできるかもしれない」と背中を押されたことも大きな動機です。
金谷社長の第一印象は、たくさんの社員を抱えるデザイン会社の社長ということで、クールでドライな方を想像していました。しかし実際にお会いすると、気さくで人間味あふれる熱い方で、そのギャップは今でもとても印象に残っています。

半年間のデザイン修正と、思いがけない「工房ショップ」の提案


プロジェクトが始まってから一番苦労したのは、財布に使う図柄のデザインを考えることでした。デザイナーさんにお願いする予算もなかったため、自分で何度もデザインを考えては毎月のゼミで金谷社長に見ていただきました。しかし、「なんか違う」「もっとこうした方がいい」「このブランドを参考にして」と何度もやり直しになり、なかなかOKはいただけませんでした。半年近く試行錯誤を続け、ようやく「おっ、いいじゃないすか!」と言っていただけた時は本当に嬉しかったです。自分一人では決して辿り着けないデザインができたと感じています。

もう一つ、強く印象に残っているのが「工房にショップを作った方がいい」という提案です。

当時は玄関を入ってすぐの部屋をただの作業場として使っており、お店にするという発想はまったくありませんでした。しかし、金谷社長からの「嵐山からも近いし、この雰囲気は活かした方がいい」という言葉に背中を押され、最初は半信半疑ながらも思い切って改装に踏み切りました。

その結果、他府県からもお客様が財布を見に来てくださるようになり、街歩き番組などのメディアにも取り上げられるようになりました。今ではこの工房ショップは、ブランド「SOMEA」にとって欠かせない場所となっています。あの時の一言には本当に感謝しています。

メディア露出や売上増加がもたらした、社内の「前向きな変化」

プロジェクトを通して、当初抱えていた課題は少しずつ改善されていきました。工房の認知度が上がり、テレビや雑誌などのメディアに取り上げていただく機会も増えました。着物以外の商品が生まれたことで新しい販路が広がり、これまで接点のなかった30〜40代のお客様にもご購入いただけるようになるなど、顧客層が大きく広がりました。また、商品開発を通じて多くの仲間や異業種の方と出会えたことは、今でも大きな財産になっています。


そして何より大きく変わったのは、私自身の気持ちです。当時は将来への不安ばかりでしたが、メディアに取り上げられたり、SNSのフォロワーが増えたり、着物以外の売上が伸びたりと、小さな成功体験が積み重なるにつれて、「自分たちの仕事には価値がある」と思えるようになりました。未来に対して「何とかなるのではないか」と前向きに考えられるようになったことは、一番ありがたい変化でした。

「七転び八起き」の精神が、思いがけない未来につながる

プロジェクト終了直後は、商品がすぐには思うように売れず、自信よりも「この先どうなるのだろう」という不安の方が大きかったのも事実です。作ったものがすぐに売れて、一足飛びに現実が変わるほど甘い世界ではないと、最初の数年は思い知らされました。
しかし、ゼミで出会った経験豊富な方々や、同じ目標に向かって努力する仲間たちの存在が前に進む力となり、あきらめずに努力を続けたことで、この10年で少しずつ見える景色が変わってきました。現在では、伝統的な池内友禅の仕事とSOMEAの新しい仕事が着実に成長し、お互いに良い相乗効果を生み出しています。今後は双方を発展させながら、伝統技術の継承や職人の育成にも取り組みたいと考えています。


これから新規開発に取り組もうとしている事業者様にお伝えしたいのは、「プロの企業であっても新しい商品やサービスを成功させることは簡単ではない」ということです。経験の浅い私たちが取り組むのですから、最初から思い通りにいかないのは当たり前であり、失敗を恐れる必要はありません。大事なのは、小さなつまづきに負けず、「七転び八起き」の気持ちでチャレンジを続けることだと思います。


私自身、思い切って一歩を踏み出したことで、想像していたのとは違う物語が始まりました。順境も逆境もありましたが、すべてが今の成長の糧になっています。ゼミへの参加は間違いなく人生の転機でした。悩んでいる方がいれば、ぜひ勇気を出して挑戦してみてほしいです。その一歩が、きっと思いがけない未来につながっていくはずです。

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