
溶接屋から生まれたステーショナリーブランド開発 |TSUGITE
柊谷溶接所
Works
Branding, Promotion
大阪市大正区に工房を構える木工会社・株式会社ブリコラージュは、造作家具や内装施工などを中心に、三世代にわたり木工を軸としたものづくりを続けてきた工房です。設計事務所や建築関係者との協働を通じて、精度の高い加工技術と柔軟な対応力を培ってきました。
その製作の過程では、長さや幅が揃わない木材や加工の余りなど、家具材としては使いにくい「端材」が必ず生まれます。
これらは一般的には廃材として扱われることも多い素材ですが、ブリコラージュではそれを「役割がまだ与えられていない素材」と捉え直し、新たな価値へと再構成することを試みています。
そうした思想を背景に、端材を活かしたプロダクトブランド 「NAIARU」 を開発。
セメントプロデュースデザインは、ブランド構想の整理からコンセプト設計、ネーミング、ロゴ、プロダクトデザイン、ビジュアル制作、リーフレット制作までを一貫して担当しました。


まずは、ブリコラージュの工房としての強みや現状の課題を整理するところからプロジェクトをスタートしました。
同社はBtoBの造作家具製作を主軸としており、受注状況や現場施工のスケジュールによっては工場の稼働に空きが生まれることや、製作工程で発生する端材の活用が課題として挙がっていました。
そこで、端材を活用した新たなブランドとプロダクトの可能性を検討するため、以下の視点からリサーチを行いました。
調査の結果、現代のオフィス空間では木材を取り入れたナチュラルな家具への需要が高く、スツールなどの小型家具は空間のアクセントやアートピースとしても機能することがわかりました。
その中で、単なる「サステナブル商品」ではなく、ブリコラージュならではの技術や思想が伝わるプロダクトとしてブランドを設計することが重要だと考えました。
ブランドのコンセプトとして掲げたのが
「ない」を「ある」に
という考え方です。
家具製作の過程で生まれる端材は、本来なら用途を持たず「ない」ものとして扱われてしまう素材です。
しかし、それらを組み合わせ、再構成することで、新たな価値を持つプロダクトへと生まれ変わらせることができます。
この思想を象徴する言葉として、ブランド名 「NAIARU」 を提案しました。
木の端材を活かし、捨てられるはずだった「ない」ものに命を吹き込み、「ある」へと転換していく。
ブランド名には、そんなものづくりの姿勢を込めています。


ブランドロゴは、端材が集まりひとつのプロダクトへと形づくられていく様子を、タイポグラフィの構成で表現しています。
文字の配置にわずかな動きを持たせることで、素材が集まり、プロダクトが形成されていくプロセスを感じさせるデザインとしました。
また、「NAI」と「ARU」という言葉の対比の中に、
×(NAI)と○(ARU) の概念を忍ばせることで、ブランドコンセプトを視覚的にも伝えるロゴとなっています。



ブランドの第一弾プロダクトとして、端材を活かしたスツールを開発しました。
このスツールの特徴は、家具製作の過程で生まれる木の端材を再構成した、唯一無二の座面にあります。
樹種や厚み、色味の異なる端材をリズムよく重ねることで、素材の個性が積層として現れる表情豊かな集成材を形成。断面をあえて見せることで、端材そのものの魅力をデザインとして際立たせています。
座面は、ブリコラージュが長年培ってきたフラッシュ構造を応用。
上下をメラミンで挟み込むことで、軽さと耐久性を両立させながら、内部構造に端材を活用する設計としました。
また、座面形状は八角形を採用。
八は日本で「末広がり」を意味する縁起の良い数字であり、人と人が自然につながる場を生むという想いが込められています。
45度の柔らかな角度は会話を生みやすく、90度の直線は空間に落ち着きを与える。
その中間にある八角形のフォルムは、空間の中にほどよい「余白」を生み、心地よい距離感をつくります。
ブリコラージュが大切にしてきた素材への視点と職人の技術が、
端材の個性を編み直した、世界にひとつだけの積層表情を持つスツールとして結実しました。










キービジュアルでは、端材が粒子のように集まり、ひとつのプロダクトへと形づくられていく瞬間を表現しています。
ばらばらだった素材が集まり、スツールへと変化していく様子を印象的に見せることで、
「ない」ものが「ある」へ変わる瞬間
を視覚的に伝えるデザインとしました。
また、端材の断面にフォーカスすることで、このプロダクトならではの素材感や個体差の魅力が際立つビジュアル構成としています。

ブランドの思想とプロダクトの魅力を伝えるため、リーフレットを制作しました。
ブランドコンセプト、工房の背景、端材の考え方、プロダクトの特徴などを整理し、
NAIARUのものづくりがどのような思想から生まれているのかを伝える構成としています。
また、製作工程や素材の表情を写真で見せることで、
端材が新たな価値へと変わるプロセスを視覚的にも感じられるデザインとしました。








ブリコラージュの工房を訪れた際、
整然と並ぶ材料の中に、大小さまざまな端材が積み重なっている光景が印象に残りました。
それらは一見すると使い道のない素材ですが、見方を変えればまだ役割が与えられていないだけの木材でもあります。
NAIARUは、そうした素材の可能性と、職人の技術を掛け合わせることで生まれたブランドです。
「ない」を「ある」に変える。
そんなシンプルな発想が、これからも新しいプロダクトを生み出していくことを期待しています。